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2004/06/11

がんばれシャープ?

世の中、法律を知らない、あるいは度外視する輩が多いってことだねぇ。( ´Д`)

シャープ、イオン向け液晶テレビの販売差し止めを請求 - 大型モデルへ発展する可能性も

まずは、この記事。シャープにとって液晶事業ってのはまさに主要ビジネスなわけで、その商圏を守るために特許権を利用することは法律で認められた権利であって、何らおかしなことではない。
一般人からは見えないかもしれないが、その特許権だってあまりに権利乱用にあたる場合には、独禁法とのバランスでちゃんと歯止めが掛かるように裁判だって審理されている。

記事によれば、シャープが訴えたのは「東元グループの日本法人」である。

さて、まず特許権に基づく差し止め請求の根拠を考えてみよう。

特許法では、第68条に【特許権の効力】が規定されている。

第68条 特許権者は、業として特許発明の実施をする権利を専有する。ただし、その特許権について専用実施権を設定したときは、専用実施権者がその特許発明の実施をする権利を専有する範囲については、この限りでない。

特許発明の実施をする権利を専有することができるわけだ。従って、第三者がこの特許発明の実施をしてしまったら専有できてないことになるし、そもそもその第三者は実施許諾を受けていない状態ではこの特許発明の実施をする権利を有していないことになる。
無権利なのに特許発明を「実施」するということは、これすなわちその特許権を侵害することに他ならない。

では【実施】って何よ( ´Д`)?というと、これは第2条3項に規定されている。

第2条 この法律で「発明」とは、自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度のものをいう。
2 この法律で「特許発明」とは、特許を受けている発明をいう。
3 この法律で発明について「実施」とは、次に掲げる行為をいう。
1.物(プログラム等を含む。以下同じ。)の発明にあつては、その物の生産、使用、譲渡等(譲渡及び貸渡しをいい、その物がプログラム等である場合には、電気通信回線を通じた提供を含む。以下同じ。)若しくは輸入又は譲渡等の申出(譲渡等のための展示を含む。以下同じ。)をする行為
2.方法の発明にあつては、その方法の使用をする行為
3.物を生産する方法の発明にあつては、前号に掲げるもののほか、その方法により生産した物の使用、譲渡等若しくは輸入又は譲渡等の申出をする行為

今回の液晶TVの場合、台湾で製造され、日本に輸入され、日本で販売され、ていると思われる。
すると、「実施」とは、「輸入」かあるいは「販売(=有償による譲渡)」になる。従って、侵害する者=実施している第三者は、「輸入」をしている者か、「販売」をしている者となる。

次いで、【差し止め請求権】は、第100条に規定されている。

第100条 特許権者又は専用実施権者は、自己の特許権又は専用実施権を侵害する者又は侵害するおそれがある者に対し、その侵害の停止又は予防を請求することができる。

よって、シャープは、自己の特許権に基づいて、「輸入」の停止、及び/又は「販売」の停止を請求することができることになる。

大事なのは、特許権というものは「各国独立の原則」があるわけで、日本の特許権に基づく権利行使は、台湾での製造には及ばないということだ。
シャープのこの特許権と同じ権利範囲あるいは少なくとも対象製品を権利範囲に含む特許権が台湾で成立していれば台湾において製造を差し止める裁判を起こすことができるが、日本の特許権に基づいて台湾での製造を差し止めることはできない(そういう観点では、記事の「液晶テレビの生産・販売差し止めなどを求める仮処分申請」の生産の部分には疑問がある)。
故に、シャープが、「輸入」を実際に行っている、且つイオングループにそれを卸している(=販売している)「東元グループの日本法人」を訴えるのは、別段変なことではないのだ。
他の視点でみると、最終的に顧客に販売しているイオングループそのものも「販売」行為を行っているので、シャープは、イオングループの販売差し止めを請求しても良かったのだ。特に、「東元グループの日本法人」が存在しておらず、「輸入」そのものをイオングループで行っていたとしたら、シャープは、イオングループを訴える他に方法がなくなる。
そういった意味では、イオングループを訴えていないのは、商取引関係に基づくシャープ側の格別な配慮と考えるべきであろう。

ところがだ、その後、この記事↓を見て仰天した。

イオン、液晶TVの販売差止め請求を受けシャープとの取引を停止 - 「シャープの企業姿勢に対し疑念を抱き、甚だ遺憾」

えっ、今回の訴えでは直接の当事者になってないのに、報復行動を起こしちゃうんですか!?(;゜Д゜)

この記事でパネル供給元がAuOという会社であることが判明したけど、この会社が台湾の会社で、台湾で液晶パネル製造をしているとしたら上で書いたように日本の特許権ではその台湾での液晶パネル製造を差し止めることはできない。あくまでも日本に入ってきた時点で初めて権利侵害になるからだ。
日本に入ってきた時点では液晶TVという製品形態になっているわけで、更に侵害の当事者はAuOではなくなっているのだから、戦略として最終製品を差し止めるということはよくあることだ。別に理不尽なことではない。

むしろ、今回のイオングループの報復行動は、法律違反になるおそれがありはしまいか?

独占禁止法(私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律)では、

第19条 事業者は、不公正な取引方法を用いてはならない。

と規定されている。

【不公正な取引方法】というのは、第2条9項に規定されており、

第2条 (略)
(中略)
9 この法律において「不公正な取引方法」とは、次の各号のいずれかに該当する行為であつて、公正な競争を阻害するおそれがあるもののうち、公正取引委員会が指定するものをいう。
1.不当に他の事業者を差別的に取り扱うこと
2.不当な対価をもつて取引すること。
3.不当に競争者の顧客を自己と取引するように誘引し、又は強制すること。
4.相手方の事業活動を不当に拘束する条件をもつて取引すること。
5.自己の取引上の地位を不当に利用して相手方と取引すること
6.自己又は自己が株主若しくは役員である会社と国内において競争関係にある他の事業者とその取引の相手方との取引を不当に妨害し、又は当該事業者が会社である場合において、その会社の株主若しくは役員をその会社の不利益となる行為をするように、不当に誘引し、そそのかし、若しくは強制すること。

となっている。

※詳しくは、公正取引委員会のサイトの解説ページを参照方。

イオングループの報復行動は、一般指定の「その他の取引拒絶」(2項)か、あるいは、「優越的地位の濫用」(14項3号)に相当する可能性があるような気がするのだが・・・・。

こういう可能性も省みず、逆切れしてるイオングループって・・・・。某政党代表も「法律を知らなかった」と言い訳してましたが、血族ってのはみんな似てしまうものなんでしょうかね。

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コメント

はじめまして。私もこのニュースに驚きと、何か釈然としないものを感じました。今日、この記事を読ましてもらって、内容が非常にわかりやすく、釈然としなかったものがはっきりと姿をあらわした気がします。シャープは最後まで毅然とした態度で対応して欲しいものです。おそらく多くの消費者はシャープを応援していると思いますから。

投稿: MOTOLOG編集長 | 2004/06/11 16:22

コメントありがとうございます。
土日はPCをほとんど使わないので、コメント頂いたのに気づくのが遅くなりました。

事の方は、1日で和解というあっけない終わりを告げましたが、最近の特許絡みのニュースには、法律知識という部分がすっぽり抜けているので、今回、その部分をメインに呟いてみました。
マスメディアは、こういう根幹の部分を全く書かずに、世論を煽るような記事ばかり書くのが困りものです。

投稿: 呟く者 | 2004/06/14 11:17

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 もう古いネタになっちゃったんですが、敢えて書いておきます。    最近のイオンがシャープに対する報復措置を執ったという事件をご存じでしょうか? 新聞やニュース... [続きを読む]

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